髪結いの亭主
幸せなときに死にたいと思うすべての人に贈る映画
基本データ
題名:髪結いの亭主
原題:LE MARI DE LA COIFFEUSE
公開年:1990
製作国:フランス
監督:パトリス・ルコント
出演者:ジャン・ロシュフォール(アントワーヌ)、アンナ・ガリエナ(マチルド)
あらすじ
少年時代に髪結いの女亭主に恋をした主人公アントワーヌ。
彼は大人になり、また別の髪結いのマチルドにプロポーズし、結婚する。
幼い頃からの夢をかなえたアントワーヌはマチルドと幸せで官能的な生活を送る。
感想
*以下ネタバレあり、注意!!
昔の、しかもフランス映画。
人にすすめてもらわなければ手に取る機会はなかなかない類の映画だと思う。
私の場合は両親がすすめてくれた。
のだけど、その時に盛大なネタバレをくらってまして。
母が「あれ、死んじゃうんだよね」って。
映画の転の部分言われてええ、、って思いながらみたけどこれは見てよかった。
死ぬのはアントワーヌだと思ってたのにまさかのマチルド。
でもマチルドの死ぬ理由はとても共感できる。
死ぬのなら一番幸せな時に幸せだなあって思いながら死にたい。
不幸を味わう前に幸せだけを胸に残して死にたい。
でも実際それを実現できる人はなかなかいないだろう。私もできない。
だからこそマチルドを羨望と憧れの気持ちでみてしまう。
とはいえ、残された側は逆に一気に不幸へと突き落とされる。
この映画のラストシーンのインパクトもなかなかではないか。
マチルドの死後、自分の想像よりも普通に過ごしていたアントワーヌ。
お客さんが入店して、普通に髪を洗う。席に通す。音楽をかける。
そこでアントワーヌお得意の不思議なダンスを踊る。
お客さんも一緒になって踊る。
二人で楽しそうにしている姿をみてなんだ、アントワーヌ大丈夫そうと思い始めた時。
彼は何かがきれたように音楽を止め、ソファーに座り、新聞を広げる。
そしてひとこと、「少しお待ちください、もうすぐ妻が帰ってきます」
この時のヒュっとする感覚は今でも思い出せる。
これをみるためにこの映画を見ていたんだなと納得した。
そして少しずれるがこの映画で好きなセリフがある。マチルドのセリフ。
「愛してるふりはしないでほしいの」
素敵だと思う。
さらに素敵なのはアントワーヌがほんとうに心の底から彼女を愛していたということ。
だから死んじゃうんだけど。
幸せなだけでは終わらせてくれないあたりやっぱフランス映画。